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イベントレポート「ハタ屋さんのステ耳で織るカラフルなチェアクッション」

和装小物や掛け軸に使われる生地金襴緞子を製造する山梨県富士吉田市のハタ屋「光織物」さんの協力のもと、金銀色とりどりの「ステ耳」を素材とし、カラフルなチェアクッションを織るワークショップを開催いたしました。



開催中のExhibition「素材へのまなざしと手仕事~ステ耳study~」のミニツアーからスタートしました。普段なかなか目にすることがない金襴緞子の生地を実際に触ってみたり、「ステ耳」という素材がどのような工程で生まれるのかなどを一緒に学びました。



そして、展示空間にどっさり並んでいるステ耳の中から、チェアクッションに使用したい色を選びました。ステ耳は、一玉10m 前後のボール状に巻かれており、糸をのばしてみると印象が異なることがあるため、実際に円形織機の上にくるくると置き、大まかに完成時のデザインをイメージしながら選定していきます。



「金襴緞子の生地は、もともと色が調和するようにデザインされているため、その調和した色糸を残すステ耳はそのままで完成された色合いともいえます。そのため、他の色と混色せずとも美しい。一方で、思わぬ混色が新鮮な色合いやデザインに発展する可能性もあるかもしれないですよ。」と、講師の安部里香さんのアドバイスを意識しながら、思い思いに色を選びました。


そして作業台に戻り、ステ耳を杼(ひ)に引っ掛けた状態でタテ糸を2本どりで上下上下と掬いながら織り込んでいきます。織る時はひっぱらないように少し余裕を持たせて織り込み、一周織り込むごとに、中心に向かって両手でぎゅっ、ぎゅっと圧縮させ、密度を上げていきます。リピート作業なので、慣れてくるとおしゃべりが弾んで参加者同志のコミュニケーションも生まれ、和やかな笑い声とBGMとして流れている織機の心地よい音に会場が包まれました。織り間違えてしまったときは、「人生はやり直せないけれど、織物は何度でもやり直せるのが良いところ」と、話しながら優しく直してくださる安部さんの姿が印象的でした。



また、途中で糸を変える際に、織ってある部分にどの色を合わせたらいいだろうかと時間をかけて悩まれている方も。同系色でまとめてグラデーションのように美しい模様を作られた方、色相や明度の異なるものをうまく合わせてコントラストをはっきりさせることで、デザイン性の高い模様に仕上げた方、繊細なステ耳を途中でボーダーのようにアクセントとして織り込むことに挑戦された方など、十人十色。


最後の2周は、クッションの耳の部分を丈夫にするために、今まで2本どりだったタテ糸を1本どりに変えて糸密度を高め、上下上下とすくいながら2周します。タテ糸がキツくなり、織りこむ作業が難しくなる上、疲れも出てきて一番の難所。そんな中、諦めることなく隣同士で励まし合いながら、最後まで手を抜かずに完成度の高いものを目指す姿は、手仕事への愛情と真剣さを感じられてこちらも背筋の伸びる思いがしました。



織物工場で生まれた廃材を、手仕事で息を吹き込み、生活に彩りを添えるアイテムに生まれ変わらせる本ワークショップの体験をきっかけに、普段の生活の中で眠っている面白い素材を見つけることを楽しんでもらえたら嬉しいです。そして、手仕事による素材のアップサイクルには色々な可能性があることが、みなさんの工夫や挑戦のstudyによって明らかになりました。ステ耳チェアクッションのstudyはこれからも続きます。


数日後、チェアクッションづくりで生まれた廃材の廃材は、近所の小さな子供たちの手に渡り、大きなライトテーブルの上に置いてみたり、大きな紙にのりで貼って糸遊びを楽しんでくれたようです。



改めて、長丁場のワークショップにご参加くださった皆様、本当にありがとうございました。


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